高齢者施設や病院では、停電がそのまま“命に関わるリスク”につながります。
医療機器、ナースコール、給排水ポンプ、冷暖房、冷蔵設備など、日常の安全と健康を支える設備は、電力が途切れた瞬間に機能を失います。

そのため、施設運営において 「非常時でも止まらない電源」=発電機の正しい選定 は欠かせません。
この記事では、発電機の基礎知識から選定のポイント、さらに高齢者施設・病院が特に注意すべき点まで、実務で役立つ内容をわかりやすく解説します。

発電機を理解するための基本知識

発電機選定の前に、まず押さえておきたいのが kW・消費電力・突入電力 の3つです。
これらを理解することで、必要な発電容量を正しく見積もることができます。

1. kW(キロワット)とは

kW=電力の単位で、電気機器がどれだけのエネルギーを使うかを表します。

  • 1kW=1000W
  • 発電機の出力も「kW」または「kVA」で表される
  • kWは“実際に使われる力”、kVAは“見かけの力”というイメージ

医療機器や空調設備など、施設内の多くの機器はkWで消費電力が記載されています。

消費電力とは

機器が通常運転時に必要とする電力のことです。

  • 例:医療用冷蔵庫 → 定格消費電力 0.8kW
  • 例:給排水ポンプ → 定格消費電力 1.5kW

この値を基準に発電機の容量を考えますが、これだけでは不十分です。

突入電力(始動電力)とは

モーターを使う機器は、起動時に一時的に大きな電力を必要とします
一般的に 定格の3〜6倍。 高齢者施設・病院で突入電力が大きい機器の例

  • 給排水ポンプ
  • エレベーター
  • 空調設備(エアコン)
  • 冷蔵・冷凍庫
  • 医療用コンプレッサー

突入電力を考慮しないと、
「起動時に発電機が落ちる」「ブレーカーが作動する」
といったトラブルが発生します。

高齢者施設・病院で起こりやすい選定ミス

医療・介護の現場では、一般施設以上に電力トラブルのリスクが大きくなります。

  • 定格消費電力だけで選び、医療機器が起動できない
  • 空調やポンプの突入電力を見落とし、発電機が停止
  • 同時使用を想定せず、容量不足になる
  • 屋内設置で換気不足 → 排気ガス問題
  • 法令基準を満たさず、消防検査で指摘される

特に 空調・給排水ポンプ・医療機器 は、施設運営に直結するため慎重な選定が必要です。

必要な発電機容量の計算方法

発電機の容量は次の式で求めます。

[ \text{必要出力(kVA)} = \frac{\text{最大消費電力(kW)} \cdot 安全係数}{力率(pf)} ]
  • 安全係数:1.2〜1.5(突入電力を考慮)
  • 力率:一般的に0.8〜0.9

例:合計消費電力 5kW の場合

[ \frac{5 \cdot 1.3}{0.8} = 8.125 \approx 8kVA ]

8kVA以上の発電機が必要

高齢者施設・病院では、
「突入電力が大きい機器が多い」+「同時使用が前提」
のため、余裕を持った容量選定が重要です。

発電機選定チェックリスト(医療・介護施設向け)

項目内容
使用機器の定格消費電力○○kW
起動時の突入電力○○kW(定格の3〜6倍)
同時使用する機器空調・ポンプ・医療機器など
力率(pf)0.8〜0.9
必要な発電機容量○○kVA以上
法令基準消防法・建築基準法に適合
設置環境屋内/屋外、換気、騒音対策
起動時間停電後40秒以内が目安

高齢者施設・病院向け:保安用発電機の選び方

医療・介護施設では、一般企業とは異なる視点で発電機を選ぶ必要があります。

非常時に動かす設備を明確にする

停電時に止めてはいけない設備をリスト化します。

  • ナースコール
  • 医療用冷蔵庫(薬品・ワクチン保管)
  • 給排水ポンプ
  • 空調設備(熱中症・低体温症対策)
  • 照明(避難経路)
  • セキュリティ設備(監視カメラ・警報装置)
  • 電動ベッド・吸引器・酸素濃縮器など

特に夏場・冬場は空調が生命維持に直結するため、空調の突入電力を必ず考慮します。

法令・施設基準を確認する

病院・有床施設・特養などは、消防法や建築基準法で非常用電源が義務化されています。

主な基準

  • 停電から数十秒以内に自動起動
  • 30分以上の連続運転が可能
  • 消防設備・避難誘導灯への安定供給
  • 排気・換気設備の確保

導入前に、自治体・消防署への確認が必要です。

設置場所と安全性

発電機は屋内・屋外どちらにも設置できますが、医療・介護施設では特に安全性が重要です。

設置場所注意点
屋外騒音対策、防犯性、排気ガス処理、雨風対策
屋内換気設備、排気ダクト、点検スペース、耐火構造

排気ガス(CO)対策は必須で、誤った設置は重大事故につながります。

起動の速さと安定性

医療・介護施設では、発電機の性能が“命を守る時間”を左右します。

  • 停電から40秒以内に起動できるか
  • 突入電力に耐えられるか
  • 長時間運転に対応しているか
  • 並列運転で容量拡張できるか
  • 自動切替盤(ATS)との連携が可能か

特に 自動切替盤(ATS) は、停電時に自動で発電機に切り替えるため、病院・施設では必須です。

まとめ:高齢者施設・病院に最適な発電機選び

高齢者施設・病院の発電機選定では、次のポイントが重要です。

  • 電力の基本(kW・消費電力・突入電力)を理解する
  • 空調・ポンプ・医療機器の突入電力を必ず考慮する
  • 法令基準を満たす機種を選ぶ
  • 停電時に自動で起動する仕組み(ATS)を導入する
  • 設置環境(排気・換気・騒音)を確認する

発電機は、非常時の安心と命を守るための“最後の砦”。
施設の規模や設備に合わせて、最適な1台を選ぶことが大切です。


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